男の道


 今回はあまぎさんがよく知るある男の話をしよう。
男はあまぎさんとはかなり長い付き合い。そう、生まれた時から一緒に育ったと言っても過言ではない。
いわば分身のような。そんな間柄だ。
その男は、決めたことは即実行する。また、自分が選んだことには微塵の迷いも持たないような、そんな男だった。
しかし、周りの意見に耳をかさないような男ではなかった。頑固というには今一歩なのである。
男は突然、こう言った。あまぎさんは男のそういう行動には慣れているが、発言の内容にはいつも驚かされるばかりだった。

「俺、もうおっぱい好きでいいや。」

唐突である。しかも言い方が変である。「別に〜でいいや。」というあきらめの感情を表している。誰も何も言っていないのに。
男は、テレビを見ていた。番組と番組の間に流れるCM。それに出演している誰かもわからない女性タレント。
それを見て唐突に、この発言をした。
男いわく、
「俺はおっぱいが好きだったんだよ。”たふたふ”なものを”たふたふ”するのが好きなんだ。」
たふたふ?わからない。わからないことはググれとのばっちゃの遺言に従って検索してみた。

たふたふ 擬音語 の検索結果のうち 日本語のページ 約 315 件中 1 - 50 件目 (0.63 秒)

なんとなく、意味はわかった。ようするにふわふわなんだけど、多少の重量感も兼ね備えているみたいな感じ。

「そう、それ。俺わかった。もうそれでいいや。俺がおっぱい好きな理由はたふたふできるからだよ。」

誰かにそう責められて言わされてる感が漂うが、誰もそんなことは言ってないので彼が自分で悟って自分に言っていることである。
男は言う。自然にたふたふしているのもいいし、手動でたふたふさせてみるのもまた、おつだと。
手動で主導してたふたふ。甘美な響きである。勝手にしろ。
男は論理型人間である。根拠がなければ、物事を信じようとしない。男が認めたということはそのCMで何かを見出したということだ。
では何が、彼をそうさせたのか?たずねてみた。

「ん?なんとなく。」

どこが論理型人間だ。思いつきで発言してるやん。こいつ、あかん子やん。
過程をすっ飛ばして結論に至るというのも、この男にとっては日常茶飯事なことで、あまぎさんも本当はそれに慣れていた。
そういうわけで、男は晴れて「おっぱい好き」になった。FFで言えばジョブチェンジ。ジョブは「おっぱい士」だろう。

「いいね。おっぱい士。何ができるの?」

もちろん特技は「たふたふする」だ。それ以外に特技はないに決まっている。あってたまるもんですか。

「じゃあ俺、これからおっぱい士でいいや。」

男はおっぱい士になった。男、いやあまぎさんはおっぱい士になった。
あまぎさんはたふたふする。今日も。明日も。明後日も。
たとえ、殴られようとも隙をみてたふたふする。たふたふしようとする。それしかできないから。それがおっぱい士。
がんばるよ、俺。
みたいな。


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